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シーク教:異教徒にも無料でご飯を振る舞うインドの宗教について

マラッカ・シーク教寺院 バジェットトラベル
この記事を書いた人
Kumi

2014年1月よりデジタルノマド的に海外放浪生活を送っています。現在10年め。COVID-19の間はタイに留まっていました。その間に最愛の猫夫に出会ってしまう。
色んなところにちょっとずつ住んでみる、短期旅行でも長期滞在でもない感じが好き。現地SIM好き。

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こんにちは、くみです。
シーク教って聞いたことありますか?

ないとしたら、『無料でご飯が食べられる寺院』は?

そんなところあるの?って思いますよね。私も、海外放浪を始めるまでは全く知りませんでした。
(バックパッカー属性の人は『ああーあれね』と思うかもしれません)

バンコクやマラッカで何度もお世話になっているので、宗教を問わずみんなにご飯を振る舞う宗教・シーク教についてあらためてまとめてみました。

※この記事は以前書いた以下の記事中から、シーク教自体についての説明をまとめて追記したものです。

他宗教の人にもご飯を振る舞うことが功徳というインドの宗教、シーク教。
実は世界で5番目に大きい宗教で、約3000万人も信者がいるのだそうです。

ご飯目当てじゃなくても、ヒンドゥー教のカースト制度を批判しているその教義は知るだけでも面白いです。私も無料のご飯がきっかけでシーク教を知る事が出来て、勉強のきっかけになって良かったです。

無料でご飯を振る舞ってくれるシーク教と、私の出会い

出会いとかこんなふうに書くと私が帰依しているみたいですけど、そんなことは特にないですよ〜!ただ何飯かの恩義があるだけ… 一桁じゃない
(私は無宗教です。無宗教 – Wikipedia  )

私が初めてシーク教寺院に行ったのはマラッカででした。
当時長期滞在していたゲストハウスで仲良くなった西洋人から「無料でランチが食べられる寺院(Temple)があるらしいよ」と言われて、半信半疑で向かってみたのです。

▼その時の様子はこちら

マラッカのシーク教寺院で、ご飯をご馳走になってきました
こんにちは、くみです。 現在マレーシアのマラッカに来ています。 今日はシーク教のお寺でフリーミールをいただいてきました。…

実際に行ってみたところ、マラッカのシーク教寺院はランチどころではなく、朝・昼・晩の3食、毎日、無料のご飯が振る舞われていたのでした。 (これは寺院によって違って、例えばバンコクのシーク教寺院は午前中の決まった時間だけですし、毎日ではないところもありました。マラッカの寺院は何であんなに予算があるんだ…)

その時はシーク教の存在を知らず、『見るからにヒンドゥーではないが、イスラムにしてはインド系の人たちだし…??』と思っていました。
何のお寺かも分からずにご飯を頂いていてごめんなさい…(;´Д`)

外国人だし信者じゃないからビクビクして行ったんですけど、「夕ごはんも来なさい!明日も来なさい!」と許容を通り越して歓迎されるような感じで、驚きました。
どうもご飯を振る舞うことは功徳につながるようで、振る舞えば振る舞うほどいい、という感覚があるようです。
(ご飯は神からの頂き物のため、残すのは厳禁です。持って帰るのも厳禁です。食べたあとに皿洗いなど雑務を手伝えるところもありますので手伝おう。また大抵寄付も受け付けています。)

▼バンコクのシーク教寺院の様子はこちらにあります。

バンコク:シーク教のお寺でフリーミール(インドカレー)を頂いてきました
こんにちは、くみです。 バンコクにあるシーク教のお寺で、フリーミールを頂いてきました。 ベジタリアンの美味しいインドカレ…

そんな大振るまいの宗教・シーク教とはなんぞや

まずはWikipedia先生に教えてもらおう!

異教徒にも外国人にもご飯を振る舞ってくれる、大振るまいの宗教・シーク教とは一体…

まずWikipediaを見てみました。

シク教(シクきょう、パンジャーブ語:ਸਿੱਖੀ、英語:Sikhism)は、16世紀にグル・ナーナクがインドで始めた宗教。スィク教、スィック教、あるいはシーク教とも呼ぶ。 シク教 – Wikipedia

インドで16世紀に始まった宗教との事。結構新しい宗教なんですね。 

『インド人はターバンを巻いてひげをはやしている』というイメージないですか?あれはインドで一番多いヒンドゥー教信者ではなくシーク教信者の姿なんです。ヒンドゥー教信者はターバンを巻きません

シーク教は世界で5番めに大きいという宗教ですが、インドの79.8%はヒンドゥー教の信者で、シーク教は1.7%しかいないそうなんです。外務省インド基礎データ・2011年国勢調査より)
それなのになぜ『ターバン=インド人』というイメージがあるかというと、シーク教の信者は教育水準の高い層が多く、なので社会的に活躍する人材が多くて、結果海外に渡航するインド人にターバンを巻いたシーク教信者の割合が多かったからなのだそうです。(シク教#教徒 – Wikipedia

以下に、Wikipediaで述べられているシーク教の教義で気になったものについて箇条書きにしてみました。

  • カーストを完全否定している
  • 諸宗教の本質は一つであるとし、教義の上では他宗教を排除することはない
  • 儀式、偶像崇拝、苦行、ヨーガ(ハタ・ヨーガの意味)、カースト、出家、迷信を否定し、世俗の職業に就いてそれに真摯に励むことを重んじる
    (社会的に活躍する人材が多いというのはこの教義の影響もあるでしょうね)
  • 離婚については、好ましいことではないがやむをえない場合は仕方がないとの見解をとる。
  • 一神教のうちでは同性愛に比較的寛容である。聖典に同性愛について明示されておらず、同性婚を受け入れることはできないが、シク教徒たちはどんな者とも互いに愛し合わないければいけないという教えのため、差別することはないというスタンスをとる

シク教#教義 – Wikipedia

教義には柔軟で寛容な姿勢を感じますね。考え方としてはかなり好きな感じです。
改修宗教なので、異教徒やインド人以外に対しても布教が行われるそうです。

シーク教Wikiもあった!

インドに行くのにどうせならシーク教寺院も行きたいなと思って調べてたら、Wikiがあった!

参考:どこかの都市にシーク教寺院があるかどうかの調べ方

ちなみに、Gurdwaraというのがシーク教の寺院を指すようなので、Google Mapsなどで調べるときは地名+Gurdwaraで調べると出てきたりします。豆な。

バンコクのシーク教寺院の説明書きから知る、シーク教の色々

さて、バンコクのシーク教寺院入口付近に英語でシーク教についての説明書きがあったので、和訳してみました。
※ 写真の掲載および文章の転載につきましては、バンコクシーク教寺院のオフィスの了解を頂いています。

バンコク・シーク教寺院の説明書き

Langar(無料で振る舞われる食事、ランガル)

まず、シーク教の特徴のひとつでもある、寺院で振る舞われる無料の食事『ランガル(Langar)』について。
(英語ですが、Wikipediaはこちら:Langar (Sikhism) – Wikipedia

▼バンコクのシーク教寺院で頂いたランガル。かなり豪勢。この日は一人一つココナッツがついた!ミカンなど果物をくれる日もありました。何かお祝いごとがあった時など豪華になるようです。そういう時はシーク教の人も多くて、寄り合い所としての宗教の機能を目の当たりにしました。

バンコク・シーク教の振る舞いご飯(ランガル)

▼これはマラッカで頂いたもの。おせんべいやデザートも付いて豪華だなぁ!

マラッカ・シーク教寺院の無料の振る舞いご飯(ランガル)

▼チャイが無限に出る蛇口があるよ…!!(無限じゃない)

マラッカ・シーク教のチャイが出る蛇口

シーク教の寺院では、人種が違っても他宗教徒でも旅行者でも分け隔てなく、ご飯が無料で振る舞われます。
これは、同じインドの宗教であるヒンドゥー教の教徒がカーストが違う者と食事を共にしない、という事に対する批判だとも言われています。

説明文があったので和訳してみますね。ここから英語の勉強っぽくなるよ〜

シーク教・Langar(無料で振る舞われる食事、ランガル)の説明

Langar is the sitting together in a row to partake food from a common kitchen, regardless of caste, creed, sex, age or social status. It is customary for diners in the Guru ka Langar to sit side by side in a Pangat or row. Langar symbolizers selfless service, love and brotherhood among the Sikhs.

(ランガル(Langar)は一列に一緒に座り、共通の調理場から、カーストや信仰、性別、年齢や社会的地位に関係なく食べ物を共にする事である。”Pangat”か列に並んで座る事はthe Guru ka Kangarでの食事の際の慣習である。ランガルはシク教徒の間の無私の奉仕や愛、友愛を象徴化するものである。)

  • partake:(食事などを)共にする
  • creed:(宗教上の)信条・信仰
  • customary:慣習

creed…ここ進研ゼミDUO 3.0 でやったところだ!

creedという単語は、Duo3.0のSection1の

You should be fair to everyone regardless of national origin, gender, or creed.
(生まれた国、性別、信条に関係なく、誰に対しても公平でなくてはならない。)

でも出てきました。
馴染みがなくなかなか覚えにくかったのですが、これで忘れなくなったかなー。regardless ofもこれでばっちりですね。

2行目のside by sideは副詞句なのでrowの並列関係にあるのは構造的にPangatだと思うのだけど(in a Pangat” or “in a row”)、Pangatってなんだろう、という…
 Women in Sikhism – Wikipedia, the free encyclopediaには”pangat (eating together)”とあるので、『一緒にまたは列になって並んで座る事は』という事かなあ。ちょっと意味が取りづらかったです。
the Guru ka Kangarは多分固有名詞なのだろう…(Guruは宗教的な指導者ですね)

確かに『カースト(Caste)に関係なく』と明言されていますねー。他宗教徒でも関係なく一緒にご飯食べよう、というのも寛大ですよね。(仏教の瞑想修行もそうですけど)

Sewa(奉仕すること)

シーク教、Sewa(奉仕すること)の説明

Sewa means to render service. It is the touchstone of Sikhism. The service of any needly person by means of body, mind and wealth has been regarded as true service. Service of Humanity is the service of God.

(”Sewa”は奉仕するという意味です。シーク教において、真価が試される事です。どんな人の身体や精神、富を使った奉仕も真の奉仕として試されています。人類の奉仕は神の奉仕です。)

  • render:(奉仕・援助を)する
  • service:奉仕

Sewa… 『世話』と発音が同じなのは偶然なのだろうか。
人による他者への奉仕が神の奉仕であると定義されているんですね。フリーミールなんかもこの思想から来るんだろうなあ。

needlyってどの辞書を調べてもなかったのですが、なんだろう…

Fateh(シーク教の挨拶)

Fateh(シーク教の挨拶)

Sikhs, on meeting greet each other with Fateh, it is a form of Sikh Salutation.
Waheguru Ji Ka Khalsa, Waheguru Ji Ki Fateh.
The Khalsa is the Lord’s own: To the Lord is the victory.

シーク教徒の挨拶のようですね。(Fateh – Wikipedia, the free encyclopedia )2行目を唱えるのだろうか。

神の栄光を称えるという事なのかな。どんなふうにするんだろう。聞いてみたいけどまずFatehが発音できないという…(;´Д`)

Dasvandth (Tithe)(教徒による収入の献上)

Giving ten percent (10%) of one’s earning for righteous way is a law of Sikh religion. Poor man’s mouth is Guru’s golak (coffer).

(正当な方法で得た収入の10%を差し出す事はシーク教の戒律である。貧しい人の口はGuru(指導者)の貴重品箱である。)

  • righteous:正当な
  • law:宗教上の戒律
  • coffer:貴重品を入れる箱

収入の10%を貧しい人たちに分け与えるということですね。フリーミールもそこから実現してるのだろうか。すごい奉仕の精神だ。

Kirtan(神への奉仕としての音楽演奏)

Kirtan is a specific feather of Sikh worship. It means singing the scripture compositions in traditional musical measures. It is the commonly accepted mode of rendering devotion to God by singing His praises. According to ”Sikh Rehat Maryada” only a Sikh may perform Kirtan in a congregation. Sikh should listen to the Gurus teachings through Kirtan, make them the basis of one’s life and this is the real listening of the Kirtan.

  • worship:崇拝
  • scripture:聖典
  • compositions:楽曲
  • devotion:献身
  • congregation:宗教上の集まり

段々訳すのが辛くなってきたので、解説だけ。
バンコクのシーク教寺院では2階でフリーミールが振る舞われています。そこでは音楽と歌がどこからともなく流れてくるのですが、それは実は4階で生演奏をしているんです。あれがおそらくKirtanなのだな。
なかなか聴き応えがあるので、内容はわからないけど、寺院に行った時はいつもしばらく聞いてしまいます。あれもちゃんと宗教的な意味のある事なんだ。

英Wikipediaには説明がありました。

Sangat(教徒による集まり)

シーク教・Sangat(教徒による集まり)の説明

It is an assembly of the devotees in the presence of Sri Guru Granth Sahib, where the praises of Almighty, Kittan of Gurbani and contemplation upon the Name of God is done. There is no discrimination of caste, Creed of highlow in the Sangat. It is applauded as a means of moral and spiritual uplift. It is as well a social unit which inculcates values of brotherhood, equality and Sewa.

うん…固有名詞がまじると辛い…

(SangatはSri Guru Granth Sahibの側で帰依した人の集まりであり、全能のKittan of Gurbaniの賛美と神の名の元での黙想が行われる。Sangatにはカーストや信仰の優劣による差別はない。モラル・精神的向上の方法として賞賛されている。同時に友愛や平等性、奉仕(Sewa)の価値を説く社会的な単位でもある。)

  • devotee:帰依した人
  • contemplation:黙想
  • discrimination:区別、差別
  • applaud:賞賛
  • inculcate:思想や知識を説く

ここでもカーストや信条の平等性に言及されていますね。 
Women in Sikhism – Wikipedia, the free encyclopedia には『holy fellowship』とありました。

寺院の中を見ていてもあちこちで人々がお話をしていたりして、宗教が寄り合い的な意味合いを持っているのだなあと感じました。

余談:TempleとShrineの違い

これは余談になりますが…

シーク教のお寺の話を友達としていた時に、これはTempleとShrineどちらだろう?という話になり。
そもそもTempleとShrineはどう違うのか?
日本にいると「仏教と神道の違い」と理解しがちですけど、本来は宗教の違いによるわけではなく、意味の違いが先にあるようです。

神社とお寺は英語で何という? ー 神社は必ずしもshrineというわけではありません | 英語 with Luke

手元のロングマン英英辞典を調べてみたところ、

Temple:

building where people go to worship, in the Jewish, Hindu, Buddhist, Sikh, and Mormon religions

(Longman English Dictionary)

(人々が行って礼拝する場所、ユダヤ教・ヒンドゥー教・仏教・シーク教・モルモン教)

Shrine:

a place that is connected with a holy event or holy person, and that people visit to pray

(Longman English Dictionary)

 (聖なる出来事や人に関連し、人々が祈りに訪れる場所)

なので、Shrineはなにか聖なるものが祀られていて、Templeは宗教施設として人々のために作られた、という違いなのでしょうか?神社は地域の神様が祀られたりしているのでShrineなのかな。

普段考えた事のないこういう事を考える機会をもらえたりもして、フリーミールは偉大だなあ。

 

私の宗教の入門書である『池上彰の世界の宗教が面白いほど分かる本』を見てみたのですが、シーク教の記述はなく…。この本はほんの入口部分を分かりやすく解説した本だから仕方がない…(つд`)

そして一瞬、シーク教とイスラム教シーア派を取り違えてましたが、全然違うものでした…

シーク教とは?あとがき

シーク教にはカーストや信仰にかかわらず平等である、という理念が根底にあるんですね。
(宗教で『信仰にかかわらず』って言っちゃうのすごい!)

シーク教寺院というと無料のご飯ばかりに注目されがちですが、どういう思想的背景や理念からそれが実現しているのか、という事を知るのもいい事ですよね。

シーク教について調べていると、他宗教を否定しない(批判は部分的にしているようです。ヒンドゥー教のカースト制度など)、戦争時にも敵方の女性捕虜を保護する、というような人道的な話が色々出てくるので興味深いです。
英語のWikipediaは日本よりずっと情報量が多く、読むのはちょっとしんどいですが、挑戦してみようと思います。Wikipediaの英語ってちょっと難しいんですよね…

シーク教寺院を実際に訪れた時の記事はこちらです。

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